えいご日日平安

つれづれなるままに 日暮らし 硯に向かひて

All Summer "Wrong"

新型コロナの影響で、神奈川県の海水浴場が全域的に中止される方向で検討されているようです。今でこそ海水浴には行きませんが、私も小さい頃は毎年鎌倉方面の海へ行っていたので、とても寂しい気がします。新型コロナは今年だけのものでもないので来年も中止、となってしまったら、もう去年までのような夏というのは、今後二度と味わうことは出来なくなってしまうのでしょうか。海水浴もダメ、400を超える花火大会も中止というのは今年だけのものであってほしいなと、切に願います。

 

そんなことを考えながら、「夏」="The Beach boys"の曲を聴いていたら、ある曲の訳詞の事を思い出しました。"All Summer Long" という曲で、映画"American Graffiti"のエンドロールの直前に流れる曲です。下の和訳は、私が中学生の時に買った「英語面白事典」に書かれていたものです。この本はいろいろな場面の英語を解説してくれるもので、とても面白く、私の英語に対する興味を広げてくれた貴重な本でした。でも、そんな私でも、中学生の私でも、この訳はなんかおかしいなと感じさせるものでした。和訳をそのまま転記いたします。

 


The Beach Boys ~ All Summer Long (1964)

 

Sittin' in my car outside your house

Remember when you spilled coke on your blouse

T-shirts, cutoffs, and a pair of thongs

Oh, we've been having fun all summer long

All summer long you've been with me

I can't see enough of you

All summer long we've both been free

Won't be long till summertime is through

But not for us now

Miniature golf and Hondas in the hills

When we rode that horse we got a thrill

Every now and then we hear our song

Oh, we've been having fun all summer long

 

キミの家の外にとめた車に坐って

僕は想い出しているのさ、キミがブラウスに

コカ・コーラをこぼしたときのことを

Tシャツ、近道、皮ヒモ、

オー、僕たち、夏中ずうっと楽しかったネ

夏中ずうっと、二人は自由で

間もなく夏は過ぎ去って

 

ミニ・ゴルフ、丘のホンダ車、

あの馬に乗ったときはスリル万点だったネ

しょっちゅう歌を聞いたものだったネ

オー、二人は楽しかったネ、夏中ずうっと

 

赤字の部分は明らかに誤訳だと思います。"cutoffs"には「近道」という意味もありますが、Tシャツに続く言葉として適切なのは、ジーンズを切って作ったカットオフパンツ、「短パン」であり、"a pair of thongs"は「ゴムぞうり=ビーチサンダル」だと思います。どちらも、英和辞典に載っています。

 

当時の英和辞典には、載っていなかった可能性は確かにあります。また、インターネットというツールもなく、身近に英語の出来る人がいなければ、仕方がない部分もあったと思います。加えて、この本の編者が有名大学の教授であることから、学生に下訳をさせていたのかも知れません。しかし、仮に学生であっても、英語の出来る人、もしくは英語を母語とする人が身近にいたと思いますので、いくらでも調べようがあったはずです。どう考えても、"a pair of thongs" を「皮ひも」と訳してしまうのは、夏休みにムチを使って「怪しげな遊戯」をするのが楽しみのようで、まずかったように思います。

 

最近の英和辞典には、"thong"の項に、「(かなりきわどい)Tバック」という意味も付け加えられています。もしこの意味を採用したら、「Tシャツ、近道、Tバック」となり、Tシャツをふんどし代わりに使って手軽にTバック、と解釈されないとも限りません。いや、そんなことはないですね。今日の私は、曲解の思考回路に操られているようです。